写真 「弥五郎どん祭」
九州南部、宮崎県と鹿児島県に伝わる巨人伝説の主人公
出典:鹿児島県曽於市観光協会公式ガイド
巨体が歩く?!曽於市大隅町の伝統
○ニギハヤヒとは
○ニギハヤヒのまたの名
○天照大神と饒速日命を祀る神社
1.ニギハヤヒとは
『先代旧事本紀(せんだいくじほんき)』によれば、父天押穂耳尊(あめのおしほみみのみこ
と)、母高皇産霊尊(たかみむすひのみこと)こと高木大神の娘豊秋津師媛拷幡千々姫(とよあ
きつしひめたくはたちちひめ)との間に誕生したが故に天孫であり、皇孫と称す。
本名は天照國照櫛玉饒速日尊(あまてらすくにてらすくしだまにぎはやひのみこと)といい、
またの名を天火明命(あめのほあかりのみこと)、天照国照彦天火明尊、饒速日命、膽杵磯丹杵
穂命(いききにきほのみこと)と云う。
「神々の系図-平成12年考」によると、ニギハヤヒは山幸彦こと彦火々出見命とし、海幸彦こ
と天之忍穂耳命の年齢は山幸彦より2歳年長で、山幸彦の父であるはずもありません。
「天神の子」とは、「呉太伯王家の男系天皇」を指しますが、ニギハヤヒは大幡主と大日孁貴
(おおひるめむち)との私生児の可能性を指摘しました。大日孁貴は神武天皇の政治的しくじり
によって神武天皇と共立することになり、ニギハヤヒは、「女系天皇の御子」へと昇格したこと
になります。したがって、ニギハヤヒは「天神の子」とみなすことが出来ます。
図 山幸彦と海幸彦系図
2.ニギハヤヒのまたの名
(1)少年期の名「大屋彦」 通称山幸彦
(2)『魏志』倭人伝が記す伊都国長官「爾支(にき)」
(3)天香山命(あめのかやまのみこと)
・新潟県西蒲原郡弥彦の弥彦神社
ご祭神:伊夜彦神(いやひこかみ)(=天香山命)
古川清久氏はブログ「ひぼろぎ逍遥」で、香春岳(かわらだけ)の香春(かわら)神社の主
祭神こそ山幸彦の妃辛国息長大姫またの名大目姫(=伊勢下宮の豊受大神)、天香山命とは香春
岳の支配者である豊受大神(とようけおおかみ)の夫であるとし、故百嶋氏の指摘を補強してい
ます。
写真 弥彦神社 出典:同社HP
後方に聳えるのが神体山「弥彦山」
(4)弥五郎どん
九州南部、宮崎県と鹿児島県に伝わる巨人伝説の主人公
写真 弥五郎どん祭 出典:鹿児島県曽於市観光協会公式ガイド
巨体が歩く?!曽於市大隅町の伝統
(5)五十猛命(いかたけるのみこと)
紀伊国一宮の「伊太祁曾(いだきそ)神社」の祭神は五十猛命またの名を大屋毘古神(別名
伊太祁曾神・射楯神)。播磨国総社の「射楯兵主(いたてひょうず)神社」の祭神は射楯大神
(=五十猛命)。筑紫野市の「筑紫神社」の祭神は筑紫大明神(=白日別神、五十猛神)です。
同神が祀られている分布地域は、石見・武蔵・越中・飛騨・常陸・肥前・筑紫・伊豆・丹波
国です。
写真 紀伊国一宮 「伊太祁曾神社」
(6)猿田彦大神(一名白髭大明神)
・伊勢市宇治浦田の「猿田彦神社」摂社「佐留女神社」
写真 「佐留女(さるめ)神社」 出典:伊勢志摩観光ナビ
猿田彦神社境内にある「佐留女神社」のご祭神は豊受気姫こと佐留女(猨目)。猿田彦と猨女
は、本当に仲睦まじい「夫婦神」で生涯連れ添いました。
・島根県安来市西松井町の「出雲路幸(いずもじさち)神社」
ご祭神:猿田彦命・天細女命
両神が大変仲睦まじかったとする伝承にふさわしい祀られ方です。分布地域は山代・阿波・越
中・越前・日向・伊賀・伊勢・美濃・武蔵・近江・陸奥国です。
猿田彦系統の物部軍後継者は物部宗家宇摩志麻遅命(うましまじのみこと 高良物部系)です。
なお、猿田彦の「猿田」とは「赤米田(あかまいた)」と故百嶋氏は述べています。
(7)天火明命(火明命・彦火明命・天照国照彦天火明命とも表記)
・京都府宮津市の「籠(この)神社」の祭神は彦火明命(ひこほあかりのみこと)
・愛媛県西条市周敷の「周敷(すふ)神社」の祭神は火明命(ほあかりのみこと)です。分布地
域は丹後・但馬・伊予・尾張国に集中。
表 ニギハヤヒの妃と御子たち「神々の系図-平成12年考」より作成
名前 | 血縁関係 | 生年 | またの名など |
ニギハヤヒ | 本人 | AD140年 | 彦火々出見命・猿田彦など |
豊玉姫 | 最初の妃 | AD153年 | タゴリ姫・若狭姫 |
ウガヤフキアエズ | 豊玉姫の御子 | AD170年 | 天稚彦・アジスキタカヒコネ命 |
豊宇気姫 | 二番目の妃 | AD154年 | 猨女・天細女 |
宇摩志麻遅命 | 豊宇気姫の御子 | AD174年 | 物部宗家 |
細姫 | 豊宇気姫の御子 | AD180年 | 後の壹與 |
生年は故百嶋氏の推定
3.天照大神と饒速日命を祀る神社
古川清久氏から事前に電話で「重大ニュース」の内容を聞いていましたが、届いた書簡を開封して驚きました。
宮原誠一氏「ブログ神社見聞牒 2017年5月28日」No.008 ヒミコ宗女イヨ」
(内容の抜粋)
筑後、筑豊では天照大神宮の神社では「天照大神」を祀っているのか、「ニギハヤヒ」を祀っているのか、分からない場合があります。表向きは「天照大神」を祀り、実際は「ニギハヤヒ」を祀っている神社が多いのです。
直接、天照大神を祀る神社は筑前、筑後では少ないのですが、これが物部の中心地(物部はのちに筑後から筑豊に移動展開する)の筑豊地区に入ると天照大神宮はほぼ全て「ニギハヤヒ」という男神を祀っている状態です。「天照大神」、「ニギハヤヒ」のいずれを祀るにせよ、扁額には「天照大神宮」と書かれている場合が多い。あるいは、「天照大神」、「ニギハヤヒ」が親子で祀られている神社も見かけます。
「天照大神」、「ニギハヤヒ」の祀り方が異なる天照大神宮の区別を4種類に分けて、代表的な神社を拾ってみました。
1.「ニギハヤヒ」を表向き祀る天照大神宮
福童神社 祭神・天照国照彦火明命 福岡県小郡市寺福童846
2.天照大神を表向き祀るが、本当の祭神は「ニギハヤヒ」を祀る天照大神宮・甲條神社
3.天照大神を表向き祀るが、本当は「ニギハヤヒ」と共に祀る天照大神宮田手神社
祭神・撞賢木厳之御魂向津媛命 佐賀県神埼郡吉野ヶ里町田手1527
4.「ニギハヤヒ」を表向き祀るが、天照大神と共に祀る天照大神宮
伊勢天照御祖神社(大石神社) 祭神・天照国照彦天火明命 福岡県久留米市大石町132
次回は「倭女王卑弥呼」です。