第九話 「天神第三代豊斟渟命」

写真 京都市 下鴨神社(賀茂御祖神社)

○豊斟渟尊(とよむくぬのみこと)とは

○「山幸彦・海幸彦」説話に登場する海神

○豊玉彦のまたの名

 

1.豊斟渟尊とは

白(ぺー)族統領大幡主の後継者豊玉彦です。

故百嶋氏は豊玉彦の別名は百以上あると述べています。

代表的な別名は「神武近侍”八咫烏”・秩父大神・賀茂建角身命(かもたけづのみのみこと)・

天太玉命・小若子命・八意思兼命・豊国主など」で、多くの神社で祀られています。

図 京都市 下賀茂神社(賀茂御祖(かもみおや)神社)境内マップ  出典:同社HP

”悠久の歴史糺の森”は是非、ご散策を。

同社の主祭神:賀茂建角身命

・忌部(いんべ)神社 島根県松江市東忌部町 出典:ブログ「出雲お社倶楽部」

主祭神:天太玉命

同社周辺からは多数の勾玉・管玉が出土し、伝承では朝廷に献上するための「勾玉・管玉工

房跡」とも云われています。

社名の由来は、忌部氏の始祖豊玉彦に因みます。

写真 忌部神社

大縣(おおあがた)神社 愛知県犬山市宮山

主祭神:大縣大神  本来のご祭神は天太玉命です。

尾張造の構造様式を正確に伝え、本殿は「三棟造・大縣造」で造られています。

写真

2.山幸彦・海幸彦説話に登場する海神

(1)登場人物

山幸彦=彦火々出見命(ひこほほでみのみこと)

海幸彦=天之忍穂耳命(あめのおしほみみのみこと)

盬土(しおつち)の翁=大幡主 実は彦火々出見命の父

海神=豊玉彦 大幡主の嫡男

豊玉姫 豊玉彦の娘  彦火々出見命の最初の妃

(2)舞台は「対馬」

登場人物が集結する舞台は、下記の神社伝承から対馬と考えられます。

写真  和多都美神社 対馬市豊玉町仁位字和宮 出典:長崎県HP

海の中に浮かぶ鳥居が象徴的です。

ご祭神:彦火々出見命・豊玉姫命

写真   対馬国一の宮「海神神社」 対馬市峰町木坂 出典:対馬市HP

ご祭神:彦火々出見命・豊玉姫命

主祭神:豊玉姫命とありますが、本来は海神こと豊玉彦

能理刀神社 長崎県上対馬町芦見字スダリ

雷(いかづち)大臣の亀卜所の跡が有名です。

写真がないので、「ブログ玄松子の記憶」で検索してください。

ご祭神:天児屋根命(=天之忍穂耳命)・天太玉命(=豊玉彦)豊雷大臣命(=大幡主)・

海祇神(わたづみかみ=豊玉彦)

3.豊玉彦のまたの名

(1)天菩比命(あめのほひのみこと)

『記紀』では、天照大神とスサノオが高天原の天安河で誓約をした時に生まれた神。

『記』は「天菩比神」、『紀』では「天穂日命」、兄神を「正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命

(まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと)」と記す。

故百嶋氏作成の「神々の系図-平成12年考」では、天菩比命は豊玉彦のまたの名、天穂日

命は父大幡主のまたの名、天之忍穂耳命は海幸彦のまたの名としています。

また、『記紀』が記す天穂日命の御子武夷鳥命(たけひなどりのみこと)は、天菩比命

こと豊玉彦の御子としています。

(2)八大龍王(はちだいりゅうおう)

仏法を守護する天龍八部衆に所属する龍族の八王。全国の八大龍王を祀る神社の由緒には

「八大龍王=豊玉彦」と記されています。

八大龍王とは「海神・龍神」の性格を持つ神で、単に「龍王」とも記されています。

(3)八意思兼神(やいおもいかねのかみ)

思兼神と八意思兼神について、『記紀』記事も同一神とし、また神社の祭神も同様に同一神

とみているようですが、故百嶋氏は「思兼神は大幡主、八意思兼神を豊玉彦」と明瞭に区別し

ています。

同神を祀る神社を列挙すると

「秩父神社」 秩父市番場町

祭神:八意思兼神・知知夫彦命・天之御中主命

「戸隠(とがくし)神社」 長野市戸隠

祭神:天八意思兼神(あめのやいおもいかねのかみ).

「阿智(あち)神社」 長野県下伊那郡阿智

祭神:天八意思兼神・天表春命(あめのうわはるのみこ と=大幡主)

(4)小若子命(こわかこのみこと)

大若子命の御子として博多の「櫛田神社」に祀られています。

(5)鴨建角身命(かもたけづぬみのみこと)

「下鴨神社(別名賀茂御祖(かもみおや)神社)」京都市左京区

東殿:玉依姫命(たまよりひめのみこと)

伝承によれば上鴨神社の祭神賀茂別雷神(かもわけいかづのかみ)の母としていま

す。

西殿:賀茂建角身命

写真  下鴨神社  出典:同社HP

正式には「賀茂御祖神社」と呼びます。下鴨神社の名の由来は鴨川の下流に祀られている

お社に因みます。

写真 「下鴨神社」のご神紋 「双葉葵」

 

愛知県安城市里町森の「不乗合森(のらずのもり)神社」のご神紋は下鴨神社のご神紋と同じ

です。

ご祭神:大山咋神(おおやまくいのかみ)

孝霊天皇の御代に、豪族間の戦いに勝利した「徴(しるし)」が ご神紋「双葉葵」です。

(6)秩父大神 秩父市番場町の秩父神社

秩父大神は八意思兼神の別名です。

(7)中将

中国魏王朝から与えられた豊玉彦の官位です。

(8)八咫烏(やたがらす)

『記紀』では、八咫烏を神武天皇東遷を先導する神で、同神を祀る奈良県宇陀市榛原高塚

の「八咫烏神社」和歌山県東牟婁郡那智勝浦町大字八咫鏡野の「八咫烏神社」の祭神「建角身

命(かもたけづぬみのみこと)」とは豊玉彦の別名であることが確かめられます。

 

次回は「天神第三代豊斟渟尊こと大幡主の後継者豊玉彦 (2)

 

 

 

 

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