第十六話 「伊弉諾尊」(2)

写真  山梨県甲府市「天津司神社」に伝わる”天津司の舞」 出典:甲府市HP

写真 「天津司の舞」行列  出典:甲府市HP

ここから太安万侶のトリック、『日本書紀』編纂者の辻褄合わせが本格的に始まります。『日本書紀第五段』本文

1.伊弉諾尊と伊弉冉尊は共に大八州國を生む際に、風の神級長津彦命・食の神倉稲魂命・海神少童

命・山神の山祇・木の神句々廻馳・土の神埴安神となづけられる自然神が登場します。

2.伊弉冉尊は火神軻遇突智を出産する際に火傷で命を落とし、「黄泉の世界」に旅立ちます。

3.十握剣で軻遇突智を三段に斬り殺し、化生した神は「経津主神・武甕槌神・磐裂神・根裂神・磐筒

男命」

4.筑紫の橘の小戸の檍原(あはぎはら)で禊ぎ祓う。ここで化生した神が「八十枉津日神・神直日

神・大直日神・底津少童命・底筒男命・中津少童命・中筒男命・表津少童命・表筒男命。底筒男命・

中筒男命・表筒男命を併せて住吉大神といい、安曇連等の祀る神。

5.三貴子、天照大神・月讀命・素戔嗚尊の誕生。

2と5の神々は理解できてもそれ以外は、あまりにも多くの神々が登場し、頭が混乱しますね。

後々、それぞれの神については詳しく説明する予定ですが、ヒントを呈示しますので「頭の体操」をしてください。

ヒント1 「トリックと辻褄合わせ」の内容

第一世代の神々 紀元1世紀初頭の神々

第二世代の神々 紀元1世紀中頃前後の神々

第三世代の神々 紀元3世紀前半の神々

以上の神々が混在しています。

ヒント2 第一次九州王朝御神霊護送船団に参加した神々

(1)大率・(・)姫氏 豹尾神(ひょうびのかみ)神武天皇・神武天皇の姉大日孁貴(おおひるめ

むち 後の卑弥呼)

(2)白族統領  黄幡神(きばたのかみ)大幡主 磐筒男神(いわつつおのかみ)豊玉彦(八

意思兼命)

(3)瀛氏統領  根裂神(ねさくのかみ)金山彦 磐裂神(いわさくのかみ)金山彦の妃埴安

姫(はにやすひめ)

(4)越智族金氏 月弓神(つきゆみのかみ)大山祇 磐筒女神(いわつつめのかみ)神大市姫

(5)経津主神命 彦火々出見命(ひこほほでみのみこと 大幡主と大日孁貴の御子)

(6)二神   吾勝(あかつ)こと天忍穂耳命(あめのおしほみみの みこと) 置瀬(おき

せ)こと市杵島姫(いちきしまひめ)

(7)一神 神沼河耳命(かみぬまかわみみのみこと)

(1)~(7)の神々は山梨県甲府市の天津司(あまつし)神社の社記によると「天より降り舞楽をなした。その後、二神は天に昇り、一神は西仙川村の旧井に入ったが、九神はなお舞楽を為したという。」と伝えています。

故百嶋氏は「二神は対馬へ新婚旅行に出かけ、一神は自らの意思で一行と離れた。」と述べています。また、「舞楽の舞台は大型の船を模した船舞台」とメモに書き残されています。

写真  天津司神社 出典:山梨県神社庁

太安万侶のトリックは、『旧辞(昔の物語)』を巧妙に創作し、『帝紀(大王家・天皇家の系

譜)』は、登場する神々の系統をすり替えています。

『日本書紀』の辻褄合わせは、藤原氏の遠祖に繋がるように創作しているのがうかがえます。

 

次回は伊弉諾尊(3)です。

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