第三十話  鵜葦草葦不合命(ウガヤフキアエズノミコト)

写真  鵜戸神宮  宮崎県日南市大字宮浦

ご祭神:鵜葦草葦不合尊・大日孁貴・天忍穂耳尊・彦火瓊々杵尊・彦火々出見尊・

神日本磐余彦尊

太平洋に突き出した鵜戸崎岬の突端に当たる洞窟の中に、朱塗りの色鮮やかなご本殿が鎮座す

る珍しいですです。 出典:日南市 観光にちなんの旅

○タイムトラベラー(時の旅人)

○本来の伝承

○青年期のウガヤフキアエズ

1.タイムトラベラー(時の旅人)

太安万侶はウガヤフキアエズを“タイム・トラベラー(時空の旅人)”として、時空を超えて

登場します。

(具体例)

・「出雲の国譲り」では、天稚彦(あめのわかひこ)・味鉏高根日子根(あじすきたかひこ

ね)として登場

・神武天皇の父として登場

2.本来の伝承

ウガヤフキアエズの父は彦火々出見命(火遠理命は創作)、母は豊玉姫。

豊玉姫夫妻は御子ウガヤフキアエズを九州(鹿路地区)に残し、若狭国へ赴任しました。そ

の痕跡を示すのが、以下の神社です。

若狭彦神社 福井県小浜市龍前

ご祭神:彦火々出見命(若狭彦)

写真  若狭彦神社楼門  出典:同社HP

若狭姫神社 福井県小浜市遠敷

ご祭神:豊玉姫命(若狭姫)

写真 若狭姫神社楼門(随身門) 出典:同社HP

故百嶋氏は講演会で「ウガヤフキアエズは3才年長の叔母の鴨玉依姫(かもたまよりひめ)を孕

ま せ、生まれた御子は安曇磯良(あずみのいそら)と名付けられましたが、なさぬ仲の二人は周囲

の反対で直ぐに別れ、鴨玉依姫は、天忍穂耳命と市杵島姫の御子大山咋(おおやまくい)に嫁ぎ、ウガヤフキアエズは大国主と市杵島姫との御子下照姫を妃に迎えた。」と述べています。

つまり、太安万侶は鴨玉依姫と大山咋の御子をウガヤフキアエズの御子とし、本当の御子安曇磯良を隠したことになります。

ウガヤフキアエズは、その後下照姫と再婚し、生まれた御子が、出雲の宮係」建諸隅(たけのもろ

ずみ)です。

3.青年期のウガヤフキアエズ

青年期に入り、ウガヤフキアエズは義父大国主の跡を継いで、出雲大社の「宮係」を継ぎ、

名を天若日子(天稚彦とも表記)に改めます。

ウガヤフキアエズは 「出雲大社の宮係」として懸命に奉仕し、周囲からも認められ、名を阿遅

須伎高日子根命(阿治志貴高日子根命、味耜高彦根命とも表記)に改めました。

・天稚彦命を祀る神社

高鴨神社   奈良県御所市大字鴨神

ご祭神:味耜高彦根命・下照姫命(妹)・天稚彦命(妹婿)・田

心姫命(母)

味耜高彦根命と天稚彦命が同一神であることを除けば、ほぼ

正確に伝えられています。

・阿遅須伎高日子根命を祀る神社

阿須伎神社  島根県出雲市遙堪

ご祭神:阿遅須伎高日子根命

『出雲國風土記』には三十九社の阿受伎神社が記され、元出雲大社の摂社と伝えられています。

注)摂社

神社の格式の一つ。本社に付属し、その祭神と縁故の深い神を祀った神社。本社と末社

との間に位し、本社の境内にあるものを境内摂社、境外にあるものを境外摂社という。

出典:コトバンク

 

これほど出雲で敬仰されていた阿遅須伎高日子根命は、いつしか慢心し、周囲から“鵜葦草葦不

合命”と呼ばれるまでになりました。

断っておきますが、ウガヤフキアエズは本来の名前ではありません。出雲国赴任時代、義父大

国主の威光ををかさにきて威張り散らした言動に対してつけられた“蔑称”です。「鵜飼い小屋の

屋根も葺けない男」という意味です。

この事実は、孝霊天皇にとっても看過できない状況となり、急遽九州へ呼び戻し、阿蘇耳族を

監視するため“大矢口物部軍”の長に任命しました。

孝霊天皇はさらに天葺根命(あめのふきねのみこと)後の名大山咋(おおやまくい)、拝跪の

神こと御年神(みとしのかみ)を含めた三人を九州王朝隠密行動隊長として、阿蘇耳族の蠢動を

抑え込んだのです。

この活躍が評価され「住吉(すみのえ)大明神」と呼ばれるようになりました。

鵜葦草葦不合命を祀る神社

鵜戸神宮  宮崎県日南市大字宮浦

ご祭神;鵜葦草不合尊・天忍穂耳尊・彦火瓊々杵尊・彦火々出見尊・神日本磐余彦尊

写真  鵜戸神宮   出典:日南市観光協会

故百嶋氏は講演会で「阿蘇耳族の中心勢力は、現在の高千穂・竹田市・祖母山・傾山・阿蘇高森、この広大な範囲を支配地としていた。」と述べています。

図  阿蘇耳族の支配地 図全体が支配地と推定されます。

次回は番外編「賢人会議」です。

 

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