第二十一話  スサノオ神話(3)

図イメージ 月岡芳年画「スサノオの八岐大蛇退治」

出典;Wikipedia(2022/01/26 21:30)

写真  石見神楽「大蛇」出典:

1.八岐大蛇

    故百嶋氏の見解

○八岐大蛇

越智族金氏の統領大山津見(おおやまづみ)と瀛氏(いんし)統 領金山彦による百年戦争

○昔氏(そくし)統領スサノオ

百年戦争を調停した報酬として金山彦の娘櫛稲田姫亦の名瀬織 津姫と大山津見の娘神大市

姫(かみおちひめ)亦の名罔象女(みずはのめ))を得ます。

○足名椎(あしなづち)

大山津見神の御子ではなく瀛氏統領金山彦

○手名椎(てなづち)

大幡主の妹埴安姫亦の名草野姫(かやのひめ)

○稲田の須賀の宮主の八耳の神

須賀は「金山彦の後裔蘇我(須賀とも表記される)氏」

八耳の神は「耳族こと阿蘇の多氏(おおし)」、太安万侶の祖先

太安万侶のトリック:二人の人物を一人の人物にまとめたようです。

百嶋氏は「太安万侶による手の込んだストーリーを創作した。」と述べています。

八岐大蛇のモチーフは、「越智族金氏・瀛氏ともに“蛇族”である」ことを念頭に創作したと推

測します。

   スサノオが建てた宮の候補に雲南市大東町の須我神社付近とされていますが、同社は和歌発祥の

地とも云われ、主祭神はスサノオ・稲田姫命・清之湯山主三名狭漏彦八島野命(すがのゆやまぬし

みなさるひこやしまのみこと)としていますが、本来の神は『出雲国風土記-大原郡海潮郷条』

が記す須我禰命(すがねのみこと)と考えられます。

2.スサノオの御子「八島士奴美神」の系譜

(1)第一世代

神名 関係 生年 またの名など
素戔嗚尊 本人 AD127年 昔氏統領・骨生・天日槍
櫛稲田比売 AD134年 金山彦の娘
神大市比売 AD136年 越智族金氏大山祇の娘
阿加流比売 AD130年 白族統領大幡主の娘

(2)第二世代

神名 関係 生年 またの名など
八島士奴美神 本人 AD? 母櫛稲田比売
木花知流比売 AD?  
大年神 腹違いの弟 AD138年 母神大市比売
宇迦御魂神 腹違いの妹 AD154年 母神大市比売

(3)第三世代

布波能母遅久奴須奴神(ふはのもじくぬすぬのかみ)妃淤加美神(おかみのかみ)の娘日河

比売(ひかわひめ)

(4)第四世代

     水夜禮花神(みずやれはなのかみ) 夫天之都度閇知泥神(あめのつどへちねのかみ)

(5)第五世代

     淤美豆奴神(おみずぬのかみ)  夫布帝耳神(ふてみみのかみ)

 (6)第六世代

天之冬衣神(あめのふゆぎぬのかみ)  刺國大神の娘刺國若比賣(さしくにわかひめ)

(7)第七世代

大國主またの名大穴牟遅神(おおなむちのかみ)・(・)葦原色許男神(あしはらしこおのか

み)・八千矛神・宇都志國霊神(うつしくにだまのかみ)

以上、『古事記』が記す(阿加流比売を除いて)八島士奴美神の系譜を検討すると、明らかに創

作したと思われる「木花知流比売神や水夜禮神」が見られます。

故百嶋氏が作成した「神々の系図-平成12年考」から考察すると

①第二世代のスサノオの御子神は

    妃阿加流比売との御子 市杵島姫またの名瀛津島姫・須勢理姫

    妃櫛稲田比売との御子 長髄彦・瀛津世襲足姫

妃神大市比売との御子 天細女またの名辛國息長大姫・志那津姫・豊受気姫・宇迦御魂など

で、「八島士奴美神」は見当たりません。

『日本書紀』は清之湯山三名狭漏彦八嶋篠(すがのゆやまみなさるひこやしましの)、またの

名を清之繁名坂軽彦八嶋手命(すがのゆなさかかるひこやしまてのみこと)・清之山主三名狭漏

彦(すがのやまぬしみなさるひこ)と記しています。

“清之湯山”は『出雲国風土記-大原郷条』が記す須我付近の温泉地で、現在の雲南市の出雲湯

村温泉と推測します。

“三名は御名”、“狭漏彦は猿彦”と考えられますが、候補としてはスサノオの孫「建御名方」、ス

サノオの入り婿「猿田彦」を挙げることはできますが、確たる証拠は見出せません。

  ②第三世代の大年神

    志那津姫の夫大年神こと志那津彦(息長津彦とも表記)はスサノオの入り婿で、本当の御子

ではありません。

  ③第四世代の神

    布波能母遅久奴須美神はスサノオの姉神俣姫またの名を闇龗神(くらおかみのかみ)

淤加美の神は、阿蘇族多氏統領神沼河耳命またの名高龗神(たかおかみのかみ)。二人の間に

は娘はいませんが、大年神の御子がいます。

  ④第五世代

    淤美豆奴神は下記の図より、スサノオの娘須勢理姫またの名市杵島比売の夫布帝耳神(太耳

神とも表記)またの名を大年神・天児屋根命・天忍穂耳命・志那津彦・安日彦(あんびひこ)・狩

場明神・高野御子・海幸彦と考えます。

   以上から、『古事記』は時の経過を長くするために系譜作りにいそしんだのでしょう。第四・六世代は全くの創作と思われます。

  『出雲国風土記』が記す創世神話の主人公“八束水臣津野命(やつかみずおみつのみこと)は大國主」”と考えられます。

次回は「大国主」(1)です。

 

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